生産性を視る
- 「1人あたりの粗利益額」を向上しよう!
- 「1人あたり粗利益が増えれば賞与が増える」と説明しよう
- 総額人件費管理の行い方
- 「労働分配率」という指標は中小企業には合わない
以下は北見昌朗の著書『幹部に年収1000万円を払う会社になろう』(PHP)からの抜粋です。
皆様の会社ではこんなことはないですか?
粗利益が増えなければ、社員の暮らしの向上はないということを、実感してもらう仕組みが必要です。
これではダメだ 予算アップを嫌がる営業マンたち
地方の老舗問屋のA社は、近年業績がやや伸び悩み気味でした。売上高は年々減少して、利益についてもほとんど出ていない状況でした。
社員は30人いましたが、採用を何年間も手控えてきたこともあって、高齢化が進んでいました。平均年齢は40歳を超えていました。
そのA社に後継者候補として入ったのが3代目のBさんです。Bさんは東京の大学を卒業して大手に入社していましたが、親に懇願されて、家に戻りました。現在35歳です。
長男であり、生まれながらの後継者候補です。
Bさんが会社に入ってすぐ目のあたりにしたのは、不活発な営業活動でした。年配の営業マンたちは、マンネリズムで得意先回りをしているだけでした。既存の顧客を回るだけで、新規開拓ができていませんので、売り上げは下がる一方でした。
こんなことですから、社員に対する給与も上がりません。賞与は昔年間3ヵ月出していた頃もありましたが、今では2ヵ月分がやっとです。この状況の中で、他社に転職できる人物は辞めてしまい、どこにも行けないような人物が残ってしまっていました。
Bさんはマンネリズムを打破するため、新年度の経営方針会議を開くことにしました。その場には全社員を集めました。
Bさんが出した計画は、売上高10%増、粗利益20%増を盛り込んだものでした。そして「会社の経常利益は前年0だったが、今期は3000万円を達成したい」と利益目標を掲げました。
しかしながら、その発表の最中、肝心の営業マンたちは浮かない顔で始終うつむいていました。そして発表が終わったら、一斉に声を上げました。
「そんなこといわれたって、これ以上売れません」
「予算増は困難です」
などといい出したのです。
Bさんは、この後ろ向きの発言にし対して苛立ちながらも「予算達成して欲しい」といい切って方針発表を終わりました。そして最後に「何かいいたいことがあったら本音でいって下さい」と付け加えました。
すると「本音でいって良いのですね?」とすぐ手が上がりました。
数人が口々にいい出したのは次のような内容でした。
「私たちは年次有給休暇もろくにとれていません」
「昇給がこの数年ありません」
「賞与が減ったので生活に困ります」
「多忙ですから人を増やして下さい」などなど。
Bさんは、自分たちの営業成果のことを棚に上げて権利主張ばかりをする社員の姿をみてウンザリしてしまいました。
皆様、いかがでしょうか? このような事例は世間で枚挙にいとまがないと思います。この事例からは、次のような教訓を得られると思います。
- 教訓その1
- 経営計画の中に「処遇の向上」が盛り込まれていない。「会社の業績向上」と「社員の暮らしの向上」とが結び付いていない。
- 教訓その2
- 経営計画の中で「会社の経常利益は前年0だったが、今期は3000万円を達成したい」と発表されているが、経常利益などという言葉は社員になかなか通じない。ここは「粗利益」という言葉を使った方が伝わりやすい。
最適な人件費の管理を提案する(株)北見式賃金研究所 北見昌朗